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HOME> 熟練のNC旋盤加工について。>旋盤コラムVOL.2~切削加工に用いる金属材料の材質について~

更新日:2019年12月14日

旋盤で切削する金属。

こちらでは、旋盤等で切削する金属についてご説明させていただきます。
主に弊社が普段、切削している金属がメインとなります。

真鍮・黄銅

真鍮は、新紀工業が、もっとも多く扱っている金属材料です。

真鍮という金属は、銅に亜鉛を混ぜ合わせた合金のことで、茶色の銅に亜鉛を混ぜると、黄色の真鍮になることから、またの名を「黄銅」(おうどう)と呼んだりもします。

よく検索エンジンで、「真鍮」と検索すると、なぜか黄銅までが検索結果に表示されるのはそのためですが、「真鍮=黄銅」です。

基本的に、金属加工業界に出回っている真鍮は、銅と亜鉛の含有率が、銅65% 亜鉛35% のものを指します。大まかにいうと6対4ぐらいです。
銅自体は大変柔らかく、この亜鉛の含有率が高くなるほど、真鍮としては固くなるのですが、粘り気がなくなってしまうために逆にもろくなってしまいます。

旋盤で切削する金属としては、真鍮は「切削しやすい、だいぶ柔らかい材料」になります。

柔らかいということは、逆に言えば「キズや打痕がつきやすい」ということになりますので、弊社では傷などの品質には細心の注意を払っております。
また、基本的に変色しやすく、機械内部で加工物に切削油などをかけると間違いなく色が変わり、汚くなってしまいます。(切削油の種類を間違えると真鍮はそれだけで腐食します)

さらに、人間の皮膚の成分によってでも変色してしまいまして、時間が経つに連れて変色の具合が進んでしまいます。
そこで考えたのが、弊社の「指紋すらつかない旋盤加工」でして、切削したばかりの綺麗な状態を保ちながら出荷させていただいております。

真鍮鋳物

次にご紹介するのは真鍮の鋳物(いもの)となります。

鋳物というのは、鋳造(ちゅうぞう)という方法で制作されます。
鋳造ではまず、「鋳型」(いがた)とよばれる品物の形状に応じた型を用意する必要があります。

我々のような業者が、鋳物専門業者に依頼する場合、まず最初に、「木型」と呼ばれる、製品の形通りに成形した木材を準備します。
それを鋳物業者様へ送り、鋳物業者様はその木型を用いて、今度は「砂型」と呼ばれる鋳型を作ります。
そこに1100度ほどに溶かした金属を流し込み、そして冷やし、さらにはその砂型、鋳型自体を割ることによって、中から品物の形状に固まらせた金属を取り出す。という製作方法になります。

工作機械のマシニングが普及する前などは、変わった形の金属製品は鋳物が非常に多かったのですが、「そもそも鋳型で制作するので製品の表面の品質が均一になりにくい」という理由から、機械の普及につれて減ってきた金属材料となります。

弊社でも以前は鋳物の品質に四苦八苦していたのですが、今は北陸地方の鋳物業者様と取引させていただいており、そこの鋳物は非常に質がよいものでして助かっております。

アルミ

次はアルミ(アルミニウム)という金属です。日本の1円球に使用されているというと、わかりやすいかと思います。

アルミは、他の金属と比べて非常に軽い(比重で言えば、鉄7.87 銅8.93に対してアルミ2.71)という利点があるのですが、何分柔らかいです。
その対策として通常は、マンガン、銅、ケイ素、亜鉛、マグネシウム、ニッケルなどを混ぜ合わせることによって、強度を確保します。
これがいわゆる「アルミ合金」でして、有名どころでは「ジュラルミン」もアルミ合金となります。

弊社でもアルミは取り扱っておりますが、切削し易さ(被削性)は真鍮の次によいです。
ただ、真鍮切削よりは、切削中の発生する摩擦熱の温度が高いなとは実感します。
その摩擦熱を冷やすために、他の旋盤業者様では切削油をかけながら切削するのですが、弊社ではアルミでも油はあまり使わない工夫をしております。

ただ、どうしても軽いために、切削中に発生するアルミ粉が宙を舞ってしまい、旋盤の中一面が微細なアルミ片だらけになってしまって、後々の掃除が大変です。

また、弊社ではアルミで釣り具の部品などを制作していたこともありますが、「錆びにくい」とされるアルミの酸化被膜は薄いため、機械加工後には対摩耗性を向上させるために、アルマイト処理を施すことが多いです。

4.ステンレス

正しくは、ステンレス鋼と呼びます。名前の由来は「ステン=錆びる」「レス=ない」という語源から由来しています。

「錆びない」として有名な金属ではありますが、まったく錆びないのかいえばそうではなく、あくまで「錆びにくい」という金属です。

成分としては、50%以上が鉄で、50%以下がその他の成分(クロムやニッケル)との合金となり、種類としては、マルテンサイト系、フェライト系、オースナイト系があります。

金属加工業界でも非常に多く使用されている金属で、有名どころではステンレスSUS303、ステンレスSUS304、ステンレスSUS316などがあります。

しかしながら、ステンレスは硬いがゆえに、切削時には摩擦熱が高温になり、材料自体も熱膨張しやすく、そしてねばく、切削しにくい金属です。

よく製品の設計図面等で出回っていたりして、一番一般的なステンレスがSUS304です。(材料が安いという理由からですが、加工の際にはだいぶ粘り気がある。)
そして、そのSUS304の粘り気を、リンや硫黄を添加して改善したものがステンレスSUS303となります。

学問上は粘い粘いといわれるステンレスSUS304ですが、旋盤で切削する私達からしてもだいぶ粘りがあり、切削中にでてくる削りカス(切り粉)だけを見てもステンレスSUS304はグルグル巻きなり、扱いづらいです。

その反面ステンレスSUS303だと切り粉がグルグル巻きになることもなく、なおかつ表面仕上げも綺麗になりますので、製品の表面仕上げにこだわる弊社では、ステンレスはSUS303のみを切削しております。

切削時に発生する材料の削りかす「切り粉」について。

普段、金属加工などに携わらない方達からすると、「金属を削ったあとの削りかす=ゴミ」と判断されそうですが、そうではありません。

実は、金属の削りかす(切り粉と呼びます)というものは、専門業者が買い取ってくれるのです。

買い取られた切り粉は、大手材料メーカーのリサイクル工場に運ばれ、そこで溶かされ、新たな金属材料としてリサイクルされています。

特に弊社が多く加工している「真鍮」の切り粉は「黄銅ダライ粉」と呼ばれて買い取り価格が一番高い材質となり、それに次いでステンレスが高く、アルミや鉄は買い取り価格が安い部類になります。

その買取価格は、海外(ロンドンやニューヨーク)の市場の金属鉱石の先物取引の相場を参考に、1週間ごとに改定されます。
例えば真鍮の場合、毎週月曜日になると、電気銅、電気亜鉛の相場を元に、日本伸銅という会社から発表され、材料屋や切り粉の引き取り業者を通じて一般の金属加工業者に通知されています。


著者:(有)新紀工業 WEB担当 新井元紀
経歴:大阪電気通信大学制御機械工学科 2002年卒業。
大阪電気通信大学大学院博士課程 機械工学専攻 2004年修了。
精密機器スピンドル用スパイラル溝付ジャーナル軸受の研究に携わる。
修了後、同年(有)新紀工業に入社。現在に至る。