NC旋盤ZL-15Sの写真
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更新日:2020年2月15日

NC旋盤加工に用いる切削工具の種類について。

こちらでは、NC旋盤加工にて、求められた形状に削るために使用する「切削工具」についてご説明させていただきます。

切削工具類の写真ドリルの写真

こちらの写真は弊社で実際に使用している工具類の一例です。

左の写真は「バイト」。右側は「ドリル」です。

バイトは、加工方法に応じて、金属素材、その形状、大きさなどさまざまな種類があります。

その種類をおおまかに分けると以下の通りです。

  • ・外径荒削り用バイト
    金属丸棒をざっくりと製品の形状に切削する工程で使う。

  • ・外径仕上げ用バイト
    粗削りバイトで制作した加工品の表面を薄くゆっくりと最終的な形状寸法に削り、綺麗な表面に仕上げる。

  • ・外径ねじ切りバイト
    外径のネジを切る際に使う。ネジピッチによっても様々な種類がある。

  • ・内径粗削り用バイト
    ドリルなどで穴を開けた後、その穴をさらに広げるために使う。

  • ・内径仕上げ用バイト
    内径粗削りで作成した穴表面の仕上げ用に使う。

  • ・内径ねじ切りバイト
    内径のネジを切る際に使う。ネジピッチによっても様々な種類がある。

  • ・溝入れバイト
    外径に対して溝を入れたい際に使う。

  • ・真剣バイト
    外径に対して角度のついた溝を入れたい際に使う。

  • ・丸チップバイト
    外径に対してR形状の溝入れ加工に用いる。

  • ・突っ切りバイト
    丸棒材の切削加工の最後に、加工品を切り落とす為に使う。

  • ・すみバイト
    溝の隅を定められた角度に切削したい際に使用う。

  • ・ローレットバイト
    外径表面上に、ローレット加工を施す際に使う。


そして、この黒くて長いバイトの先端には、黄土色やグレーの小さな部品が付いています。これが「チップ」、いわゆる「刃」の部分です。

チップの写真そのチップの写真がこちら。

どこの工場でも大きな工作機械を揃えて金属を加工していますが、直接金属を削っている要の部分は、実は、こんな小さなものなのです。

このチップは削る金属材料よって使い分けるため、種類も豊富に販売されています。


また、この写真に写っているチップは、摩耗して使い物にならなくなると交換する(スローアウェイ式やインサート式と呼ばれる)タイプですが、その他にも、バイトにチップを溶接して交換できない刃先溶接式があり、こちらは主に難しい形状の加工のために特注で制作されます。

さらに、さきほどの切削方法、「荒削り用」「仕上げ用」「内径切削用」「ネジきり用」などに応じてでも使い分けるもので、現在、流通しているチップの種類は数千種類はあります。

「そのような多種多様なチップの中で、どのメーカーの、どの形状、素材(金属)のチップを選んで使うか?」

現場の職人は、自分の好みや経験で選んで使用しています。旋盤の機種、工具など他のすべての要因が同一でも、チップが違えば仕上がりも違い、旋盤加工においては最重要部分です。

このチップ選びや、バイト選び、ドリル選び、そして加工プログラム。これらが、「職人の腕の見せどころ」だと思います。

弊社では主に、三菱マテリアル、タンガロイ、サンドピック製の刃物やバイト使用し、ドリルは主にOSG製のものを使用しています。

切削工具の摩耗、工具寿命について

チップやドリルなどの切削工具は、金属を削る度に少しづつ摩耗していき、あまりにも摩耗がひどくなると、切削後の金属表面が粗くなったり、刃が欠けたり。またドリルを使いすぎると、ドリル自身が折れたりします。

その摩耗の最大の原因は、切削面での摩擦によって発生する高温の熱(切削熱)が挙げられます。
この熱を抑える対策として、通常は、切削油と呼ばれる油を金属材料と切削工具にかけ流がら加工します。
特に、鉄やステンレス、チタン、難削材の場合は切削油は必須です。
真鍮やアルミでも基本は切削油を流す工場が多いですが、弊社の場合は一切流さなくても大丈夫な切削加工技術です。

また、「材料の回転速度」や「金属を削るときにどのぐらいの速さで削るかという切削送り速度」、これらも切削工具の寿命に大きな影響を与えます。

普通に考えると、「柔らかい金属材料の場合は、切削速度は速くていいんじゃ?」とか、逆に「固い金属材料の場合は、切削速度は遅くゆっくり慎重にでしょ」と考えそうなものですが、一概にそうでもありません。

柔らかい金属でも、削る速度が早ければ金属の表面が粗くなったりしますし、固い難削材料だからといって、ゆっくりドリルでも突っ込んでいようものなら、折れる確率が高いです。(ただ勢いよく突っ込めばいいという話でもないですが)

ですので、上記のような切削工具の寿命が短くならないようなプログラムを作成したり、常に刃やドリルの状態を確認したりして、あまり取り替えなくてもいいように、工具を長持ちさせる工夫が必要です。

参考文献:切削工具の基礎講座(モノタロウ)


著者:(有)新紀工業 WEB担当 新井元紀
経歴:大阪電気通信大学制御機械工学科 2002年卒業。
大阪電気通信大学大学院博士課程 機械工学専攻 2004年修了。
精密機器スピンドル用スパイラル溝付ジャーナル軸受の研究に携わる。
修了後、同年(有)新紀工業に入社。現在に至る。